公園化が予定されている上水南町2丁目の佐川道場跡地は、大東流合気武術の第一人者であった佐川氏のご遺族により市へ寄贈していただいたものです。書籍『深淵の色は』に、ご遺族の思いが次のように綴られています。
⾃宅の跡地を笑顔で過ごせる公園にし、『合気公園』の名称で、将来、合気の聖地として親しまれる場所になってほしい
深淵の色は 佐川幸義伝
なお、土地と同時に、金2,947万1,353円も市へ寄付していただいています。
この公園用地について、市は、公園整備費用を捻出するため面積の約3割を売却する計画を立てました。しかし、多くの周辺・近隣住民と、道場門人の方々は、土地を売らずに進めて欲しいと考えています。周辺・近隣住民と門人の方々、そして複数の小平市議が参加する「旧佐川邸の公園化を考える会」においても、その意を汲んで、土地を売らずに済む方法を模索しています。このような背景から、市も整備を停止している状況です。
土地の測量や既存建物の解体等に、市はすでに合計約1,900万円を支出しています。さらに今後、公園設計と(土地を分割して販売する際の)分泌測量等費用に約580万円、工事費に合計6,300万円が必要と概算し、その同額を土地売却により用立てようとしています。なお、市は寄付金について「使途の指定なしでご寄付を受けており、この公園整備に使わなければいけないものではない」としています。一方で、工事費以外の費用想定額が、寄付金と近い額になっていたことから、市も実際はご遺族の遺志を汲み、寄付金を公園の整備費用に充てる予定であった、とも考えられます。
項目 | 金額(円) | 概要 |
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寄付金 A | 29,471,353 | 土地とは別にご寄付頂いた金額です |
市の支出 ① | 6,907,539 | 平成29年度~平成30年度(執行済み) 測量・不用品処分・アスベスト処理・解体設計等 |
市の支出 ② | 12,530,080 | 令和元年度(執行済み) 解体工事・害虫駆除・樹木剪定等 |
執行済み額 ①+② | 19,437,619 | 市がすでに使った金額です |
A-(①+②) | 10,033,734 | 寄付金から、すでに使った分を引いた額です |
市が予定して いた支出 ③ | 5,802,000 | 令和元年度予算(未執行) 公園設計、文筆測量 分泌測量は土地を分割売却する際の測量です 市のプランが停止しているため執行されていません |
市の概算 工事費用 ④ | 63,000,000 | 「不明点が多いことから、多めに計上した概算」ですが、これが土地3割売却の根拠となっています |
土地3割の 売却想定益 B | 63,000,000 | 市はこれを工事費用に充当しようとしています |
市の当初 計画収支 | +4,231,734 | 上記[ 市の収入(緑色)-市の支出(橙色) ]です |
上記表に示したように、寄付金+想定土地売却益-市が想定していた支出 = 約4百万円となります。つまり、市は、寄付金から4百万円程度を除いた分を、公園の整備に使おうとしていたともいえます。また一方で(想定土地売却益は実際はもっと大きくなるはずですから)、この公園の事業で、市はお金を稼ごうとしていたともいえます。今後の公園メンテナンス費用を稼いでおきたいという思惑や、損失を出すと市民から訴えられるリスクがあることを心配してのことかもしれません。
私たちの要望通りに土地を売却しない場合、この工事費6,300万円(もしくはそこから上記の500万円弱を引いた額)をどうするかが問題です。しかし、この6,300万円は、市の担当者も「不明点が多いことから、多めに計上した概算である」と認めている額です。内訳をみると、見直しの余地は大きくあります。周辺・近隣住民の合意形成のもと、必要最小限の整備を行い、完成後に、必要に応じて、設備や樹木を(寄付金等の活用により)追加する方法をとれば、「直接工事費」を大幅に減らすことができます。また、経費率が91%のため、例えば「直接工事費」を1千万円減らすと、総額では1,910万円減ることになります。
さらに、道場門人の方々は、ふるさと納税制度による寄付において使途をこの公園整備に限定してもらえるのであれば、全国の門人の方々から年間約8百万円~1千万円の寄付金が見込めるとしています。佐川道場で合気を学んだ方々にとって、道場跡地は「心のふるさと」です。市はこれまで「他の自治体の財源を奪うことになる」という理由から、ふるさと納税制度の活用に消極的でした。しかし、この制度は「ふるさとを応援したいという人々の心、気持ちを大切にする」ということに主旨があるはずです。少なくとも、小平市からの流出額と同額程度までは、本来の目的に沿った形であれば、活用しても良いように思います。
また、コロナ禍により、市の財政状況もさらに悪化します。今後、新しい公園を整備する方法も見直す必要があると思います。
- 周辺・近隣住民の同意のもと、最低限の整備で公園を完成させる
- ふるさと納税制度を活用した寄付金が見込めるのであれば、活用する
- 公園完成後も、寄付制度やアダプト制度の活用等により、樹木や設備を充実させていく
この公園を、そういったモデルケースにすることもできると思います。なお、私たち周辺・近隣住民の多くは、公園の自主的な管理にとても前向きです。
さらに、佐川幸義氏についての書籍や、インターネット上の解説が、各国語に翻訳されている状況からも分かるように、佐川氏は、日本国内だけではなく、世界中に多くのファンを持つ、人を惹きつける力のある方です。道場跡地は、小平市の観光地の一つになります。
佐川幸義氏は、
合気は争う事を致さず
合気の妙用は、天地森羅万象一切に合一同化し融和するにあり
といった言葉を残されています。「(すぐにできるようなことではなく)、長い間の努力・訓練・工夫・研究によって少しずつ出来るようになる」ことの大切さも説いていました。コロナ禍で人々や経済が疲弊する中、健康や、身近な人々の関わり合いに、「合気」というテーマは生きてくるはずです。整備のあり方においても、時間がかかってでも、他の公園に良い影響を与えていく、そういう公園になって欲しいと願います。
以上のような背景があり、公園化を考える会ではさまざまに話し合ってきました。その中で、会に参加してくださった方のご縁で、ランドスケープデザイナーの方も参加してくださっています。詳細は議事録をご参照ください。現在、以下のような公園コンセプトが完成しました。
公園コンセプト「ここちよく、しなやかさのある公園」
☆ 住⺠に親しまれ、誰もが気軽に訪れることができる地域コミュニティの拠点とする。
☆ 合気の聖地として、佐川先⽣の思いを知ってもらう。
☆ 防犯・防災機能を持ち、安⼼、安全に利⽤できる。